寒冷な季節で、暖房も動いておらず、遺体は腐敗溶解することなく、乾燥収縮。
わかりやすく言うとミイラ状態で、害虫も発生もなく、異臭もわずか。
ニオイの主は、「死臭」というより「尿臭」に近いもの。
あと、カビ臭いような、ホコリっぽいようなニオイも強かった。

ただ、故人の死とは関係なく、部屋は自体的に、結構な不衛生状態。
高齢男性の一人暮らしだから、「仕方がない」と言えば仕方がないのだろうが。
掃除らしい掃除をしていたような形跡はなく、とりわけ、台所の流し台やトイレ・風呂は酷い有様。
また、洋服なども脱ぎ散らかされ、生活雑貨も乱雑に置かれていた。

ここは、かなりの老朽建物。
他室が空室になっても、入居者を募集することはせず。
この部屋も然りで、リフォームして新たな入居者を募集する予定はなし。
全室が空になった時点で、取り壊される手はずになっていた。

したがって、依頼された作業内容は、必要最低限のこと。
凝った消臭や消毒もなく、内装設備の修繕はもちろん、ルームクリーニングもなし。
それは、当社でなくてもできるような内容。
しかし、そこは、人が亡くなった現場。
「腐乱死体現場」ではないといっても、「孤独死現場」であるというところに、大家も遺族も躊躇いを覚えたようだった。

作業は、淡々と進められ、アッサリと完了。
古ぼけて汚れた部屋と、ひっそりと亡くなった故人が重なって、少ししんみりした現場だった。