ヒューマンケアの事例紹介Example
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特殊清掃 消毒・消臭
死後推定2週間の特殊清掃事例52 【横浜市緑区】
ある真夏の朝、特殊清掃の相談が入った。
内容は、「高齢の母親が孤独死」「死後約二週間」「管理会社に近隣から苦情が入っている」「今日の午後、来てもらえないだろうか」というもの。
重症現場を想像するには、「猛暑の中で死後約二週間」というだけでも充分だったが、「近隣苦情発生」という情報は、その想像に輪をかけた。
とにもかくにも、早めに現場に行くことが肝要。
当方は、当日の予定を変更して、現場に行くことにした。
訪れた現場は、公営の大規模団地。
当方は、約束の時間に合わせて現れた男性と軽く挨拶を交わし、「近隣から苦情が来ている」ということを意識しながら共に目的の部屋へ。
異臭が外にまで漏洩していることが考えられ、男性も不安げ。
しかし、玄関前に立っても異臭が感知せず。
ドアの隙間に鼻を近づけても、それらしきニオイは感じられなかった。
往々にして、人伝の話は内容が変わりやすい。
男性は、近隣苦情を管理会社を通じても聞いており、どこかで話の中身が変わったものと思われた。
当方は、これまで経験してきた“異臭苦情”の実状を踏まえて、ここで発生している苦情の核心を想像。
実際に臭っているからではなく、精神的な嫌悪感から苦情を入れている可能性があることを説明。
その上で、専門業者に相談している旨と、場合によっては当方のことも伝えて構わないことを男性に話した。
玄関を開けて一歩入ると、ハッキリした異臭が感じられた。
ただ、ニオイの強度は中~低。
しかも、慣れた当方にとっては、ほとんど苦にならないレベル。
しかし、男性はそうはいかなそう。
一緒に入室することに躊躇いを覚えたようだったが、息子としての責任を感じてか、当方と共に玄関から奥へ進んだ。
間取りは一般的な3DK。
遺体汚染は、奥の和室にあった。
残念ながら汚染の程度は重症で、近づくと、自ずと異臭レベルは上がった。
汚染のほとんどは寝具とベッドマットが吸収、その下に敷かれたカーペットが一部汚れ、更にその下の畳にも浸透していた。
ただ、不幸中の幸いで、内装建材に直接的な汚染はなし。
故人の所有物以外で汚れていたのは畳一枚きりで、その汚れも軽いものだった。
部屋は全体的に整然としており、清掃もキチンとされていた。
まるで、自分がいなくなることがわかっていて、片付けて逝ったような雰囲気。
そのことを男性に訊ねると、
「母は、“いつ逝ってもいいようにしておかないと”とよく言ってましたから」
と、故人の几帳面できれい好きな気質を明かした。
主な作業は、ベッド・寝具・カーペット・畳、そして、靴下等のちょっとした汚れ物を撤去すること。
思案が要ったのは、消臭消毒をどの程度までやるか。
シッカリやるに越したことはないが、それには費用と時間がかかる。
簡易的にやれば費用も時間もかからない分、効果もほどほど。
男性の考えを聞くべく、当方は、両方のメリットとデメリットを説明した。
一般的に、公営住宅は民間の賃貸物件に比べて原状回復の縛りが緩い。
しかも、ここの内装設備は、相応の通常損耗・経年劣化があり どのみち改修されるはず。
高額な費用と時間をかけてシッカリ消臭することまでは求められないように思えた。
しかし、男性は当方に費用を訊いたうえで「それくらいの費用で済むならキチンと消臭してほしい」と要望。
それは、管理会社や近隣の体面を気にしてではなく、故人の気持ちを汲んでのことと思われた。
まずは、遺体によって汚染された物品を撤去
その後、当初の予定の二週間を、追加料金なしの三週間に延ばして消臭消毒を施工。
もともと重異臭が残留していたわけではなかったことと、作業にたっぷり時間をかけたことで、異臭はきれいに消え、強力な消臭をかけた後に残ることがある作業臭も残らず。
ベッド等がなくなった部屋はガランとし、畳一枚抜けた光景からは特有の寂しさは滲みでていたものの、それを除いては、まるで何事もなかったかのような平和が戻ってきた。
男性が満足してくれたのはもちろん、勝手ながら、故人も満足してくれたのではないかと思ったのだった。
→※詳しい話は「特殊清掃 戦う男たち(天の上の力持ち)」
| 作業場所 | 公営団地 |
|---|---|
| 依頼内容 | 特殊清掃 消臭消毒 |
| 作業時間 | 3週間 |
| 作業人数 | 延べ人数4名 |
| 作業料金 | ― |

孤独死部屋の原状回復はヒューマンケアへ
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